食で心を繋ぐフランスのチャリティーLes Restos du Coeur(心のレストラン)

先日最寄りのスーパーへ食材を買いに出かけたところ、入り口をくぐってすぐのところで2人のマダムがビニール袋とチラシを配っているのを見かけました。店内の買い物客はビニール袋を受け取り、自分たちの買い物かごとは別にその袋に商品を詰めています。実は、この少し不思議な光景はフランスでよく知られたチャリティー活動の一環だったのです。

フランスの慈善団体Resto du coeur (レスト・デュ・クール、心のレストラン)

こちらではSDF(Sans Domicile Fixe、サン・ドミシル・フィクス)と呼ばれる所謂ホームレスの人を結構見かけますが、通りがかりに挨拶を交わしたりコインを渡したりする人は比較的多いように感じます。2、3日前にも寒空のもと座り込んでいる男性に近くのパン屋さんで買った温かいコーヒーとパンを差し入れている女性を見かけました。

このようにフランスでは自分が持つものを分け与えることへの抵抗感が少なく、ごく自然にチャリティーが行われています。フランス人の知り合い曰く、こちらの人なら誰でも知っているという慈善団体がResto du coeur(レスト・デュ・クール)です。

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正式名称はLes restaurants du coeurで日本語にすると「心のレストラン」。一体どんな活動をしているのでしょうか。

創設者はフランスの人気俳優、コリューシュ

先ほどお話した通り、心のレストランの活動はフランス人の間で広く知られています。心のレストランがこれほどの知名度を保っている背景には、創設者であるフランス人俳優、Coluche(コリューシュ)の存在があります。

コリューシュは1944年パリに生まれました。3歳のときに父親を亡くして以来、パリ南西に位置するMontrouge(モンルージュ)で貧しい生活を送ることになります。

26歳のときに喜劇役者としてデビューし、トレードマークである黄色いTシャツにサロッペットという出で立ちで人々に愛されました。そのポップな風貌とは反対に、社会に対する痛烈な批判やタブーとされていることに大胆に切り込んでいく姿勢もよく知られています。

20/02/1986. PARLEMENT EUROPEEN: RESTAURANTS DU COEUR

 

1985年、コリューシュは自身が出演するラジオ番組で心のレストランの設立を宣言しました。社会的に弱い立場にある人々を支援するという考えは、彼の幼少期の経験に基づいているのかもしれませんね。

«J’ai une petite idée comme ça (…) un resto qui aurait comme ambition, au départ, de distribuer deux ou trois mille couverts par jour».

「私にちょっとした考えがあります。まず手始めに日ごと2、3000の食事を提供するという大きな目標を持ったレストランのことです。」(筆者訳)

Les Restaurants du Coeur-Notre Histoireより引用

多くの人が彼のアイデアに賛同し、活動の輪は今日まで広がっています。翌年の1986年、残念ながらコリューシュはバイク事故によってこの世を去りました。

今年で彼が亡くなってから30年。パリ市庁舎ではコリューシュへの哀悼の意を表して、2016年10月6日から2017年1月7日までコリューシュ展を開催しています。衣装や写真、インタビュー映像なども展示されるとのこと。

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日曜・祝日を除いて毎日10時〜18時30分(最終入場は17時30分)までやっているようです。入場無料なので、ご旅行の際に足を運んでみると面白いかもしれません。

私も年末はパリで過ごす予定なので行ってみようかなあ。

コリューシュ展の公式ページはこちら。(コリューシュの画像はすべてコリューシュ展公式ページより引用。)

http://www.paris.fr/coluche

 

Les Restos du coeurの活動

1985年の設立当時、Les Restos du Coeur の主な活動は生活に困っている人々に対して、冬の間の食事支援をすることでした。その後、夏期の活動が始まったり、Loi Coluche(ロワ・コリューシュ、コリューシュ法)と名付けられた新たな法律によって寄付が推進されたりとさまざまな試みがなされてきました。

また、食の分野だけにとどまらずSDFに対して臨時の宿泊所を提供したり、子どもたちの識字率向上を目指した学習支援教室を開いたりとLes Restos du Coeurの活動は多岐にわたっています。

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Les Restaurants du Coeur公式ホームページより引用。

とはいえ、私が実際に見かけたように食べ物を介したチャリティーもいまだ健在です。買い物客は通常通り会計を済ませ、レジの外でLes Restos du Coeurのメンバーに食品が入った袋を預けます。メンバーはフランス各地に設置されているセンターに食品を持ち帰り、その後困難な状況に置かれている人々のもとへ食事が届けられるのです。

 

かっこいい「愚か者たち」、Les Enfoirés(レゾンフォワレ)

Les Enfoirés(レゾンフォワレ、愚か者たち)はLes Restos du Coeurと同じ年に誕生し、音楽を通して人々の心にメッセージを届けています。

フランスの国民的歌手Jean-Jacques Goldman(ジャン=ジャック・ゴールドマン)

コリューシュは個人的に親交のあったJean-Jacques Goldman(ジャン=ジャック・ゴールドマン)にLes Restos du Coeurのテーマソングの作成を依頼しました。

ゴールドマンは活動の主旨に賛同し、1985年に最初の楽曲であるLa Chanson des Restos(ラ・シャンソン・デ・レスト)を発表。このとき、レコーディングには「シェルブールの雨傘」の主演を務めたCathline Deneuve(カトリーヌ・ドヌーブ)やフランスサッカー界のレジェンドMichel Platini(ミシェル・プラティニ)なども参加しました。

Les Restos du Coeurは昨年設立30周年を迎えましたが、ゴールドマンは現在もなお楽曲を提供し続けています。

 

フランスの有名人が集うチャリティーコンサート

ジャン=ジャック・ゴールドマンを筆頭に、Les Enfoirésは1989年に初のチャリティーコンサートを実施し、以来定期的にコンサートを開催しています。あらゆる分野で活躍する有名人が一緒にいるところを見られるチャンスとあって毎回大盛況のようです。コンサートの収益はLes Restaurants du Coeurの活動に貢献しています。

ちなみに次回のコンサートは2017年1月18日〜23日の日程でフランス南西部の都市トゥルーズで実施予定。チケットの詳細などはLes Enofirésの公式ホームページに掲載されているので、興味がある方はぜひ!

Les Enfoirés公式ホームページ

http://enfoires.fr/index.php

最後に

1人の喜劇役者の発案によって生まれたLes Restos du Coeurの活動に異なる分野で活躍する多くの著名人が賛同してきました。食や音楽を通じたチャリティーってなんだかフランスらしいですよね。また面白い取り組みを見つけたらご紹介するのでお楽しみに!